
家づくりを考えるとき、ほとんどのご家族が真っ先に口にされる言葉があります。
それが「家事動線」です。
たとえば──
「洗濯機から物干し場までの動線を短くしたい」
「キッチンからパントリー、冷蔵庫までの動きがスムーズな方がいい」
「掃除道具をすぐ取り出せる場所に置きたい」
こうしたご希望は、もちろんとても大切です。
家事がしやすい家は、ストレスが少なく、日々の暮らしをラクにしてくれます。
私たちも、そうしたご要望には細かく耳を傾け、できる限り効率的な導線を設計します。
でも、実は私たちが“それ以上に”大切にしていることがあります。
それは──
「家族の気配が、自然と感じられる家」
ということです。
家事動線は「効率」

でも、家族動線は「つながり」
多くのご家族が家事動線に注目されるのは、「今、日々の暮らしで困っていること」が明確だからだと思います。
洗濯が面倒、料理中に子どもの様子が見えない、片付かない…。
現実の「不便さ」が目に見えているからこそ、それを解消しようと家づくりに取り入れたくなる。
でも、ちょっと思い出してみてください。
あなたが思い描いている「理想の暮らし」って、本当に“家事がラクなだけ”で成り立っていますか?
・夕方、リビングにいると「ただいま!」と元気な声が聞こえる
・料理をしながら、ダイニングで勉強している子どもに声をかけられる
・眠る前に、ふとんからパパとママの笑い声が聞こえて安心する
こうした何気ない「気配」の積み重ねこそ、家族にとって大切な“居場所”ではないでしょうか。
間取りで、家族の距離は変えられる

少し前に、こんなお客様がいらっしゃいました。
お子さまが中学生になり、だんだん会話が減ってきたことを気にされていたご夫婦。
「部屋にこもりがちで…」と心配されていたのですが、家づくりの中で私たちがご提案したのは、“あえて部屋に行くまでにリビングを通る間取り”でした。
「え?そんなことで変わるんですか?」と最初は半信半疑だったご家族も、暮らし始めてみると──
「毎日『おかえり』『ただいま』が自然と交わせるようになったんです」
そんな声をいただきました。
たった数歩の通り道。
でもその間に、ちょっとした会話が生まれる。
表情を交わせる。
それだけで、家族の距離はぐっと縮まります。
家事を「誰がするか」で変わる設計

また、よくあるご相談で「キッチンの位置」をめぐるお話もあります。
多くのご家庭では、奥さまが中心に動かれることが多いですが、最近はご主人も料理や片付けに積極的というケースも増えてきました。すると、キッチンを中心にした“家族全員で使いやすい動線”が求められるようになります。
お子さまが成長して手伝うようになれば、また動線が変わっていく。
つまり、家事動線は「今」だけではなく「これからの暮らし方」にも目を向けて設計する必要があるんです。
私たちが考える「良い動線」とは、効率だけでは測れません。
“誰が、どんなふうに、どんな気持ちで動くか”まで想像することが、理想の家づくりにつながると信じています。
「つながり」のある暮らしを設計する

動線設計というと、なんだか難しそうに感じられるかもしれません。
でも、大切なのは図面の線ではなく、「家族の姿」を思い浮かべること。
・休日の朝、だれが最初に起きて、どこで何をする?
・お風呂あがりに、子どもはどこで髪を乾かす?
・宿題をする場所は?
・料理中に誰かが話しかけてきたら?
そんな日常の「ほんの一コマ一コマ」をイメージしながら、私たちはプランをつくっていきます。
そしてその中で、できる限り「顔を合わせられる」「気配が感じられる」配置を意識する。
気づけば、家族が自然と集まり、ほどよい距離感で一緒に過ごせる。
そんな設計ができたとき、家という空間が“住むための箱”から、“関係性を育む場”へと変わるのです。
効率よりも、心地よさを

「家事動線がいい家」とは、言ってしまえば“便利な家”です。
でも、“心地いい家”は、便利さだけではつくれません。
音、光、視線、気配。
そこに暮らす人の感情や関係性が重なって、初めて「この家にしてよかった」と思えるのではないでしょうか。
私たちは、そんな家を一緒に考えていきたい。
だからこそ、効率も大事にしながら、それ以上に「つながり」や「安心感」を大切にした家づくりをご提案しています。
これから家を建てるあなたへ。
図面を見ながら悩んだら、少し目を閉じて思い描いてみてください。
「家族がどこにいて、どんなふうに過ごしているか」を。
私たちがつくるのは、“動きやすい家”だけではありません。
“幸せが巡る家”を、一緒につくりませんか?